掲載された内容は取材時のものです。
阿蘇の溶岩は肉をじっくり焼く。
民芸工房鉄石
井 日出夫
ピンチをチャンスに変える、と人はよく言う。
けれど言うだけでは何も始まらない。アイデアと実行力が要る。
四十代前半で倒産の試練をくぐった井日出夫さんがその実例です。
不屈の始まりは父ゆずりの溶接技術をつかったバーベキューセット。
そのうち「石焼き」に目をつけた。
阿蘇には溶岩がある。溶岩プレートだ。
極寒の冬も酷暑の夏も山へ登り、石を切り出してくる。
つぎは阿蘇神社の篝火がヒントになった。
懐石料理の一人用のプレートだ。これが大ヒットとなった。
「阿蘇の溶岩は遠赤外線効果が高い。肉の中までじっくり焼けます」
原石を切るところから細かい細工まで、すべて手仕事。
評判は評判を呼び、作れども作れども追いつかない日々です。
作業場前には原石の山。使いきるには百歳を超えるだろう。