農人であり、湯守であり、歌手でもある。
薬師温泉
浜 潔
伯母さんが経営していた旅館が昭和六十年代に閉じられ、お風呂だけ手を加えて改装し、町湯として生まれ変わった。
子どものときからよく手伝っていた甥っ子の浜潔さんは、高齢(現在一〇五歳)の伯母さんに代わってこの湯の管理を引き受けました。
農業の仕事もある。朝、まず田へ行って働いてから、湯の面倒を見るために湯殿へ駆けつける。
丹念に掃除をし、ごほうびの一番湯。
ふたたび田に戻って仕事をし、夕方また湯殿へ。
多忙はそれだけではない。
カラオケの喉が玄人はだしで、コンクールでチャンピオンになり、おおぜいの生徒を教える立場となる。農人と湯守と歌手。
あまりの無理がたたって股関節を痛め、手術を受けた。
「歩けなくなったかもしれん」ところを救ってくれたのがいつも面倒見ている湯。
毎日の湯治が、驚異の回復力を生んだのです。