掲載された内容は取材時のものです。
大きな風景は、細やかなこころを引き立てる。
阿蘇ホテル
和田久美子
ピアノやエレクトーンの教室で、ずっと子どもたちに教えていた。
「私自身はバッハが好きです」
音楽の父と呼ばれる偉人の、あの壮大で繊細な世界を愛しているのだろう。
さすがに本業が多忙で教室までは手が回らなくなったが、子どもに音楽のよろこびをていねいに教えることで培ったもの、いってみれば「こころの共鳴」のたいせつさが、女将という仕事に生かされている。笑顔のハーモニーだ。
「若いころ、頭痛持ちだったのですけれど」
嫁ぎ、この湯に親しむようになってからすっかり縁が切れた。
出張などでしばらく出かけると、
「早く帰ってホテルのお風呂に入りたくて……」
そういう湯をゆっくり味わってもらうことがうれしい、と和田久美子さん。
この仕事の歓びは、「人との出会い」という極上の幸が味わえることですね。