掲載された内容は取材時のものです。
礼儀作法は剣道で磨いた。
湯の宿 入船
米村直美
内牧温泉は、地下深いところの花崗岩の地熱によって温められる「花崗岩性温泉」だ。
ナトリウムや重炭酸などの成分を多く含むと知られ、どの宿も、この湯に惹かれて訪れる客が多い。
湯の宿入船は全七室という小ぢんまりした宿で、宿泊客よりも地域の人びとに町湯として親しまれるほうが多く、「いかにも内牧らしい湯」という評判は高い。
女将の米村直美さんは小学生のときから剣道に励み、高校時代は三段まで昇りつめた。
武道の基礎である礼儀作法は、この仕事の基礎でもある。
夫が九州各地を調理師修業して歩いていたころから支えてきた。
いま入船の料理長としての彼の手仕事を、言葉少なくこう誉める。
「なんてきれいなんだろう、といつも思います」