私の産湯には、この池の水が使われた。
産神社総代
山本敬一
数十年に一回、土用三郎の日(夏の土用入り三日目)にこの神社の池に乳白色の水が湧く。
「物質的にまだ完全には解明されてないといわれます」
日々、境内の世話をしている総代・山本敬一さんもその目でしかと真っ白い池を目撃した。
それは数分後に透明に戻る。
神社創建は二百数十年前、熊本(肥後)藩士三淵永次郎による。
白き池とはまた貴きこと、これは乳の神。
美しい女神豊玉姫毘売命が祀られた。
「私の産湯には、この池の水が使われたそうです」
八十数年前に生を受けて以来の付き合いということになる。
数年前、脳梗塞で倒れた。
妻が毎日神社にお参りをし、この水を届けてくれ、三ヶ月間飲みつづけた。
「そのおかげで、ほら……」
後遺症ひとつ残さず完治して、壮健そのものである。