怒っている日は作れないんです。
とうきび人形
松本以智子
中世ヨーロッパの農婦が、静かに大地の恵みを祈っている。
そんな風情の人形たちです。素材はとうもろこしの皮。
「公務員の夫は典型的な転勤族。日本中を旅して暮らしました」
二十余年前、北海道に住んだ折りだった、松本以智子さんは地元の人からこの人形作りを教わった。
とうもろこしといえば、故郷の阿蘇にもたくさん育つ名産品だ。
すっかり没頭した。独自のワザも開発していった。
夫の定年後、故郷に帰ってきて、いっそう人形作りに磨きがかかる。
天然素材の味わいをていねいに生かされた農婦たちはみな、太陽の匂いがし、干し草のような風を感じさせています。
気持ちが穏やかでないと皮が破れたり歪んだりしてしまう。だから、
「怒りっぽい日は一体も作れないんです」