掲載された内容は取材時のものです。
ひとのこころに響く仕事がしたいと思った。
おーくら亭
大倉雅樹
三十九歳のとき、阿蘇に戻ってきた。
こんなに広大で美しいところだったとは、と強くこころを打たれた。
一年余前に開業した店の、その大きな窓から望むは外輪山。
「晴れた日には木の一本一本さえも見えます」
大学時代から京都、卒業後はそのまま学習塾の教師として暮らした。
小学校の恩師にあこがれ、ひとを育て、導くことに燃えたのだ。
しかし受験生を送り出しつづける「むなしさ」が次第に募ってきて、
「丹念にモノを作り、決して大勢でなくとも……」
ひとをこころから喜ばせることに全精力を傾けたいと熱望する。
選んだのが料理の世界。
京都で修業の道をまっしぐらに歩み始めた。
そして阿蘇に戻り、居心地を考えぬいた店をオープン。
「きちんと作品を作り、じっくり縁を広げられればと思います」