掲載された内容は取材時のものです。
一生一品、ただいま模索中である。
阿蘇向栄堂
佐藤法志
創業百年を超える老舗の四代目店主だ。
ただし正直なところ、その自覚を持ち続けていたわけではなく、菓子に自分の人生をかけるのはなあ……。
まるで空気が入れ替わるようにその意識が変わったのは、平成二十五年に三代目である父が他界してからである。
たとえば、餡。
砂糖と小豆と寒天だけで練り上げるものが、
「どうしてこうまで奥が深いのだろうと……」
いまさらながら感じ入った。
菓子づくりの世界に突進していく。
昨日までは老舗の第一章だったのだ。
今日からが僕の第二章。
数年間よそで修業していたときの師匠が言った
「一生一品」のことばが身に沁みる。
「その一品、模索中です。まだアイデア真っ白です」