掲載された内容は取材時のものです。
自分を確かめるつもりで試験を受けた。
九州産交バス阿蘇営業所
春山義富
阿蘇の風物詩をデザインした路線バスが走る。その名も「然バス」。
春山義富さんは、専任ではないが運転士として頻繁に乗務する。
「観光気分になってウキウキするね、とお客さまから好評です」
営業バスの運転歴十六年になるのだが、きっかけが興味深い。
かつてホテルマンとして送迎バスの運転に携わっていた。
あるとき一人の乗客から「あんたの運転は荒いね」と言われた。
他意はなく軽い調子の批評だったのだが、
「自分のことはわからないものです」
誠実な人柄ゆえに、こたえた。これは確かめなければと思いつめた。
そして現在の会社の試験を受けてみる。
落ちたらこの道はすっぱり諦めると決めて。
むろん合格したわけだが、いま「荒い」と評されることはいっさいない。
「野焼きで真っ黒になった山が、緑へ、紅へ、白(樹氷)へ変わるさまなど……」
乗客といっしょに阿蘇の魅力に浸るよろこびを味わっている。