掲載された内容は取材時のものです。
山里の庵は、あたたかな夢を産む庵。
産庵
村上小百合
父は、阿蘇の高菜漬けを初めて商品化し、販売の軌道に乗せた人だ。
だから幼いころから漬物づくりの作業は近くで見ていた。
「子ども心にも、こんな大変なことはぜったい嫌だって……」
思っていたが二十代前半継ぐことを決心した。そうなったからには、
「ようし、昔ながらの漬物屋のイメージを打ち破ろう」
結婚し夫の協力も得て、通販を始めるなど「漬物の新世界」に挑戦する。
いま村上小百合さんは宿場町坂梨に情趣ある店を構える。
じつは二十余年前、父からこの地を勧められたときはぴんとこなかった。
「時が経って(人生を重ねて)、よさが分かるようになったのですね」
湧水が美しい。小さいが由緒ある神社がある。
借景は雄大な自然だ。店名は神社の名(産神社)をとり、ここから夢を産み出していこう、の心意気。
長男が蕎麦職人の修業を積んで戻り、おにぎり、漬物に加えて蕎麦処ともなった。