掲載された内容は取材時のものです。
野の花でしつらえる、やわらかな空間。
梅くら
梅木孝蔵
十八歳で英国留学したときは、料理の道に入るなんて考えもしなかった。
語学や歴史をじっくり勉強していこうと心構えができたころ、アイルランドの過激派IRAによるテロが頻発し始め、帰国勧告を受ける。
出鼻をくじかれ、日本に戻っても「自分の道」がうまくとらえられない。
たまたま親戚の人の事業を「商売の勉強」として手伝った。
それが厨房機器全般を扱う仕事だったことから、料理の世界が開けることになる。
和食の師匠に八年間の丁稚奉公、とことん鍛えられ、そして三十七歳で独立。
せっかくあんたの店を作ったのだから、あんたらしい料理を出しなさいよ。というお客の忠言で吹っ切れ、梅木孝蔵さんの創作料理は始まった。
「試行錯誤の日々ですけれども、この道で行きます」
野の花を育てるのが趣味だ。
これを店内の「しつらい」として飾る。大好評だ。
物腰やわらかく気品ある店主そのものが、一枝の野の花のようでもある。