掲載された内容は取材時のものです。
微生物の出来事と語り合う。
山一食品
中山達也
父が創業したこの仕事を引き継いでもう三十年余になるが、子どものときから友だちも誘って手伝っていたから中山達也さんの心身には、それ以上の経験が染みこんでいる。
主となる商品は阿蘇名物の高菜漬だ。
発酵という自然の営みの力を借りて仕上げる食品。
だからこそ、その力を敬いつつ、理想の味へと導く努力が欠かせない。
「酒と同じですね。じっくり育て、見届けるのが最重要の仕事」
科学技術の進歩で、安定した商品が生まれるようになってきた。
けれども、やはり微生物の世界は深遠だ。
「蓋を開けてみるまでわからない、という緊張感はつねに付きものです」
だめだこれは! と二十トン分まるごとすべて廃棄したこともある。
理想を高く厳しく保つことで、
「これぞ阿蘇の味」を守りつづける。