掲載された内容は取材時のものです。
無類のピッツァ好きが選んだ人生第二章。
溶岩石窯ピッツァ 轍
芦田謙哉・久美子
二十六歳のときから建設会社のトップとして、多くの優れた建造物に携わってきた。
顧客からも従業員からも信頼あつい経営者である芦田謙哉さんだが、
「人生の後半戦に向けて、次なる道を考え始めました」
無類のピッツァ好きである。若いときから全国の名店を食べ歩いてきた。
それは、グルメの旅というより修業の行脚であった。
店の厨房で名人の技を穴の開くほど観察し、それを自分の技として吸収する。
五十歳を目前にして念願のオープン。
山のなかに停泊する宇宙船のような店だ。
むろん、従業員の進路については最後の一人まで完全にクリアした。
自分の店をやるからにはこだわった。
材料はすべて本場イタリア産を取り寄せる。
そしてユニークなのは阿蘇の溶岩をつかった石窯。なんと手づくりである。
「たいしたことではありません。橋を造るのと同じ理屈ですから」
いまや多くのファンが通ってくる。
何十年来の親友のように、あるいは幼なじみの旧友のように、主人とのんびり言葉を交わして時を過ごす。