掲載された内容は取材時のものです。
だれに頼まれたわけじゃないけど、帰ってきた。
漬物工房 まんまミーア!
佐藤智香
中学生のときは大工になりたかった。
工業高校では木工デザインを学んだ。
そして社会人としてカーデザインの制作会社に勤務し、新車のデザインと格闘する。
「バラバラなようですけど、つまりモノづくりが好きな女なのです」
控え目に、すまなそうにそう言う佐藤智香さんだが、じつは熱い心が燃えている。
生まれも育ちも阿蘇だ。二〇一四年に帰ってきた。
「だれに頼まれたわけじゃなく、私が戻らないとこの家はなくなってしまう」
と、そんな思いに駆られてだった。花形職業をあっさり捨て、畑に入った。
農業をずっとやってきた祖母に教わり、やがて漬物に心を奪われる。
「発酵食品の面白さ、奥の深さに引きこまれました」
自然にしか作れない味、人工ではできない味の魅力は汲めども尽きない。
たとえば高菜なら、朝から夕方までかけて収穫し、すぐに漬ける。
「そうですねえ、夜中の三時ごろまで漬けています。ホホホ」
時を忘れて、大きな画布に向かって絵筆を動かす。
そんな光景にすこし似ている。