掲載された内容は取材時のものです。
ライダーの聖地が励まし、救ってくれた。
阿蘇市経済部観光課
菊地歩美
大学生になってすぐ、友だちの影響でバイクの魅力を知った。
身体全体で風を切る、あの感覚は難問を鮮やかに解いたときの快感に近い。
いっぱしのライダーとなり、ライダーの聖地である阿蘇によく通った。
その阿蘇が、菊地歩美さんをある挫折による心の傷から救ってくれることになる。
九州大学工学部物質科学工学科に進学し、化学の道に踏みこんだ才女。
開発者を目指そうとまっしぐらに進むが、つまずいたのは修士課程のときだった。
自分は知識を学ぶのは得意だけれども、創造的な研究には向いていない。
つくづくそう思い知り、自信を失い、落ちこむだけ落ちこんだ日々のなかで、
「もう何も考えずに阿蘇を走ってみよう」
と聖地を訪れ、長く滞在した。
道も自然ももちろん素晴らしいけれど、いちばん癒してくれたのは人情だった。
ここで生活していきたいと胸の底から思った。
雲が切れ、太陽が見えてくるようだった。
さいわい職を得て、阿蘇人として願ってもないスタートが切れた。
観光に携わり、大好きな場所そのものを仕事にできる幸福を強く感じている。