鉄人ランナーは、山づくりの名人でもある。
熊本走ろう会
阿南重継
七十四歳のとき、マスターズ陸上大会で世界記録にあと3秒、悔しかった。二〇〇八年には妻とともにフルマラソンを完走。
夫婦合わせて堂々の百六十一歳、これはギネス記録に認定された。
「走り始めたきっかけは四十七歳のとき、村内駅伝大会に駆りだされたことです」
阿南重継さんの才能が開花した。以後は、起伏ある山道を日々ひたすら走った。だれもが認める鉄人として、賞状とメダルが自宅の廊下を埋めていく。
「千里の行も足下より、継続は力なりとしみじみ思います」
人柄を信頼され三十歳で行政区の区長に推挙、数年後から村議会議員も務める。そのかたわら林業にも励んだ。
マラソンランナーはまた山づくりの名人でもある。
惚れ惚れするほど美しい杉山を現在も育てつづけて、いま卒寿(九十歳)。
百二十歳ぐらいになって、「なんでそんなにお元気なの?」と訊かれたら、迷わず「走っているからです」、そう答えようと決めている。
自分を育ててくれた地域に恩返しをするため、ずっと健康を培っていく。