滝が外輪山を流れ落ちる。冷風によりしぶきが壁に凍りつく。氷瀑だ。
天に向かって昇る氷の柱、ぞれが冬の阿蘇名物、古閑の滝。
知る人ぞ知る景観だったのが、平成十五年、写真入のチラシが刷られ、その威容に驚いた人びとが殺到した。大ブレークである。
「地元の人聞としては、来てくれるのだからもてなしをせにゃならん、と」
中村平八郎さんが中心になって、駐車場を造ったのが観光組合の初仕事だった。
すごいですねえ、いいものを見せてもらいました、と訪れる人たちが口々に言い、感銘して帰っていくのがうれしい。
東側に雄滝、西側仁雌滝の二本。
それが落ちて同化するので縁結びとも言われる。
「氷の柱も素晴らしいけれど、冬の空がまたいいのです」
凍った滝の真上に冬の星座オリオンが冴えて輝く。じつに壮大な光景。
三月の末ごろになると、氷は溶けて落下する。
その音は、この静かな人情の里に希望の春を告げるのだ。