掲載された内容は取材時のものです。
困難を上回って余りある恩恵を受けている。
阿蘇山上職域防災防犯協会
菊池秀一
阿蘇たかな漬を伝統の製法で作りつづける老舗「菊池食品」の三代目社長である菊池秀一さんは、阿蘇草千里ケ浜駐車場の中央に位置する「草千里レストハウス」のオーナーでもある。
そして、二〇一四年からは阿蘇山上職域防災防犯協会の会長も務め、地域の財産であり象徴であるこの山を見守りつづけている。
「引っ込み思案な子どもでした」。自分の意見を強く主張したりせず、おとなしかった。が、家業である「商い」は幼いころから空気のように身体に沁みていて、店番や配達を手伝う少年時代だった。
大学を卒業し、いろいろな可能性を思案したこともあったが、根底にあったのは「地域に貢献していきたい」というこころざしだった。
水害や噴火、そしてこのたびの地震、とほんとうに大変な目に遭いますね、とマスメディアの人は言う。そのたびに思うことがある。
「それはずっと歴史的な現実です。が、先祖はこの地から逃げ出して行ったか、行きませんでした。なぜだろうか」
自然は確かに厳しい、脅かされることもある。けれども、それを上回って余りあるほどの恩恵を受けていることを、この地に生きる人びとはしっかりと自覚しているのだ。
観光阿蘇の力を、そうした大自然への崇敬を通して考えていきたい。そう語る。