岩村林業 岩村雄太

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掲載された内容は取材時のものです。

間伐したあと、光が照らす地面のなんと美しいこと。

岩村林業
岩村雄太

祖父が阿蘇で苗木業を始め、父が林業へ展開した。それを受け継いだ岩村雄太さんは岩村林業の三代目社長である。
二十三歳から農業(米)と林業に精を出している。「父のころ、林業はとても元気があったようですが」。残念ながら、その勢いがいまもつづいているわけではない。が、ひとことも愚痴を言わぬ、きわめて前向きな、明るい努力の人である。
熊本地震が発生した。とくに被害の大きかった地域のひとつだった。ちょうどまさに苗木にとっては植え付けの大事な時季である。
「決定的な打撃を受けました」。スタッフたちが山で間伐作業をつづけていた現場のすぐ近くが崩れたことを知り、天に祈る気持ちだった。
全員の無事を確認したときには、「ああ、助かっとる……」安堵で身体中の力が抜けた。
林業はけっして順風満帆の仕事とはいえないが、百年かけて山をつくる、そのことの責任と誇りを感じている。
「間伐したあと、光が射しこんで地面をきらきらと照らしだす、あの美しさは……」、何ものにも代えがたい感動だ。「木の男」だけに与えられるご褒美である。
人が手を入れなければ、森林はすくすく育たない。いまは立派でなくとも、この山が三十年、四十年先にどんな風景になっているか、その姿がありありと目に見えている。