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火山を見つめながら、防災を考える。
熊本大学名誉教授
渡邉一德
県北の南関町出身。山と田んぼと畑と小川で遊びながら、両親を助けて戦後の食糧難を乗り切った。
「その頃の子どもは、鳥や魚の捕まえ方をよく知っていました」。
厳しい時代だったが、「教育を受けて早く給料取りになって独立せよ」という両親の考えで、兄弟6人全員大学に進む。
卒業後、中学の理科教師を経て、母校の理学部に新設された大学院に進学。火山を専攻する。
修士1年の時、阿蘇の専門家と出会い啓発された。大学院を出て高校の教師を4年勤めた後、教育学部助手として大学に戻る。
「ラッキーが重なった」と言うが、転機を好機にするには努力と才能が必要だ。修士時代に志した道を究め、34歳で博士号取得。
以来30余年。火山研究の第一人者として研鑽を重ね、多くの論文を発表。後進の教育に力を注いだ。
「阿蘇山頂の火山博物館で巨大噴火を理解し、ジオパークの素晴らしさを体験するのは大きな意義がある」。
地震や噴火の可能性に言及し、防災減災のためにはもっと自然を学ぶことが必要と話す。
今でもポケット図鑑を手に野山を散策する。専門分野を極めた情熱は、自然に囲まれて過ごした幼い日々に芽吹いたのかもしれない。