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温故知新で、阿蘇の観光に新しい光を。
阿蘇山西巌殿寺
鷲岡嶺照
佐賀市で生まれ育ち、大叔父が住職だった西巌殿寺には子どもの頃からよく遊びに来ていた。
中学卒業の前に「お坊さんになってみないか?」と声をかけられ、この道に入る。獣医になるのが夢だったが、命に接することに変わりはないと考えて決めた。
「ご縁があったのだと思います」。
寺は古くから阿蘇山修験道の拠点であり、九州の天台宗の最高位のひとつ。亡くなった方の供養だけでなく、日々、阿蘇山の信者さんや檀家さんが相談ごとにみえることも多い。
「お寺は生きている方のためのものでもあります」。
代々阿蘇火口の静謐を祈り続けてきた寺の住職として、阿蘇観光の未来にも心を配る。
山上にある西巌殿寺奥之院は、縁結びの寺としても有名。良縁成就を願うカップルたちの間で話題になり、2008年に県内初の“恋人の聖地”に認定された。
昔から若い男女が春と秋の彼岸に火口に詣でた「オンダケサンマイリ」など、1300年続く古刹の由来を広めることで、阿蘇に人を呼びたい。よいところを掘り起こし、付加価値をつけて広めたい。
「阿蘇は良い山、恋の山。なんてどうです?」と笑顔が福々しい。熊本最古の寺から、新たな阿蘇のエポックが始まる。