掲載された内容は取材時のものです。
山と海との大きな繋がりに感動している。
林業
青木 隆
若き日、バイクで全国を旅していた青木隆さんは美和さんと知り合い、二人でたくさん話し合った。そして選んだのが、「自然の中での人生」だった。大学で建築史を学び、古民家研究のフィールドワークをつづけてきて、「ああいうところで暮らしたいなあ」という思いが下地にあった。妻とも「同じ方向を向いていることがわかりました」。
となれば、拠点だ。全国をめぐった。そして、縁あって阿蘇の林業家の親方と知り合い、いっきに道が開ける。里山の古民家が空いており、そこで暮らし、1年間、熊本県の長期研修で学び、晴れて山の仕事師に。
林業は木を伐る仕事、と漠然とイメージしていたが、携れば携るほど、「その奥の深さに心打たれていきました」。森があるべき姿に育つよう、人の手をかける。苗を植え、草を刈って造林し、間伐により陽を導き、整える。そうして森は空から得た水をたっぷり抱きとめる。水源涵養だ。その豊かな水が川となり海を育てる。「山と海との大きな繋がりに感動しています」。
古民家暮らしは、よけいなもののない暮らし。不便は?と尋ねられると、答えに窮する。不便だなんて考えたこともないのだ。家族とともに、「一生、山で生きていきたい」。静かに、きっぱりと言う。かたわらで妻が微笑む。