ＮＨＫ熊本放送局で活躍し、退職後の現在も阿蘇を中心にアナウンサーの仕事をつづけている古川望美さんだが、「学生時代、しゃべらない生活を心がけていました」。
大分県の芸術短期大学の声楽科で歌を学んだ。「声は歌に使うもの、だからしゃべることに浪費しないようにと考えていたのです」。音楽で身を立てようとがんばる。が、人生には予期せぬことが起きる。大学の先輩からの、「ＮＨＫのキャスターのオーディションがあるよ、受けてみたら」の軽い一言がきっかけ。運試しに似た思いで受けたら、あ、合格。2ヶ月間の研修を受け、年度初めから現場に。「これはどっきりカメラではないか、とずっと思っていました」。
身を削る現場で奮闘しつづけた4年間ののち、退職。結婚、出産の慶事を経て、夫の仕事の関係で阿蘇に移った。これがまた新しい人生の鍵を開けた。阿蘇市が運営するインターネット放送局の番組制作スタッフとして、企画から関わり、取材し、構成し、もちろんアナウンサーもやり、という日々だ。誠実で手堅い仕事ぶりが各方面で信頼を得ている。
仕事でふれあう阿蘇の人びとは、「宝石のようです。どなたも損得を超えたところで動いておられます」。大きな自然の中で育ったからこその人間風土だと感心している。